Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第9回

ビクトリアへ! そしてレインフォレストに! ~BC州滞在記 その5~

(photo:Jun Yanagisawa)

ストラスコナを後に、今日はバンクーバー島の南端、BC州の州都ビクトリアに向かいます。同じ島のなかと言っても車で4~5時間のドライブ、途中の町にも立ち寄りながら進むとします。
ここからはビクトリア在住の日本人ガイド、ノロさんが案内人として加わってくれました。さらに賑やかな旅の予感です。

ノロさんがなかなか面白いところに連れて行ってくれたのですが、それは追々レポートするとして、特に印象に残った「MacMillan Provincial Park(マックミラン州立公園)」を今回はご紹介しましょう。
カナダにはたくさんの州立公園があります。ストラスコナのように大きなところもありますし、もっと大きなところも小さなところもあります。マックミランは小さいほうに属しますが、車を走らせているとこのくらいの規模の公園が度々、道路の横に現れます。そして、ほとんどの公園にはトレイルが整備されています。「Lupine Falls Trail」のときにも書きましたが、こういった主要道路の脇にあるトレイルは長いドライブの途中で少し体を動かしながら気分転換するのにピッタリなのです。
そんな目的もあって私たちは駐車場に車を停めました。マックミランは人気が高いらしく駐車場も人でいっぱいでした。入口で地図を見るとせいぜいトレイルは1周30~40分くらいのようです。「じゃあ、ここをぐるっと歩いてみようか」と伸びをしながらみんなで相談して1歩、なかへ。

えええっ!!?素敵すぎ!!
駐車場で大勢の人のなかにいて気づかなかったのでしょうか?いや、本当に森に入った瞬間に世界が変わったように感じました。なんということでしょう!どこかで聞いたことあるようなフレーズが何度も口から漏れます。これがカナダのレインフォレスト、私が14年前に出会った西海岸の森、いつかまた見たいと思っていたコケに覆われた森です。コケを傷つけないように木道が敷かれています。

(photo:すずき)

カナダ西海岸のレインフォレストとは温帯雨林、海が近くにあるからこそ育つ森です。日本だと白神山地がこれにあたりますが、世界的に見てもほんのわずかしかない原生林なのです。その世界の温帯雨林の1/4がBC州にあるといわれています。実はストラスコナではここまで美しい森には出会えなかったので(公園境界線の伐採が進んでいた)、私は思っていたような森に会えて感激に震えていました。これまで車窓から見えていた森もきれいでしたが、こんなにも違うものなのでしょうか? 圧倒される年月の積み重ねをばんばんと感じます。でもそれは所どころ弱まります。気のせいかもしれませんが、お疲れなのかもしれません。
ちょうど曇り空から光が差し、森は早朝のような柔らかい表情になります。神々しいと簡単に言ってしまうのが勿体ないようで、しばらく恍惚としてしまいました。結局、30分くらいかなと算段していた私たちでしたが1時間近くそこにとどまってしまいました。駐車場で待っているノロさんをそっと思い出しました…。

BC州のレインフォレストの代表選手はウェスタン・レッドシダー(米杉)、ウェスタン・ヘムロック(米ツガ)、ダグラスファー(米松)です。公園の入口にこんな案内板がありましたよ。「ダグラスファー、ダグラス氏に発見される」。なんでも、スコットランド生まれの植物学者ダグラスさんがこの木を見つけて公に紹介したんだとか。和名を「ダグラス松」にしたら面白かったのに、と思ったり思わなかったり。木にも自分の名前がつけられるんですね!

このほかにも公園内には植生や歴史を説明する案内板が設置されていて大変お勉強になるのです(英語が分からなくても絵だけでも何となくは理解できます)。トレイルを整備することで自然の一部を疲れさせているかもしれないけれど、その一方で実際に歩いて見ること、感じること、考えることができる、こういった場所は今の私たちに必要な気がします。マックミランのように多くの人が訪れたらそれだけ多くの人が何かは感じるのです。なにを感じるかは人それぞれですが、みなさんはどう思いますか?

ビクトリア到着!

寄り道しすぎたのか、予約していた17時ギリギリにビクトリア「某所」に滑り込みました。車窓に流れるビクトリアの市街は昔の印象のまま! お花に溢れ、落ち着いた活気があります。さあ、でも急がねば乗り遅れてしまう!!
滑り込んだ先は私がビクトリアで密かに、いや大っぴらに楽しみにしていたあるアクティビティ…
それは「ホエール・ウォッチング」
船に乗ってクジラを見にいくツアーです。ここビクトリア沖にはクジラはクジラでも「シャチ」が暮らしています。クジラは季節によってたいへんな距離を移動しながら暮らしていますが、なかにはよほど気に入ったのか定住する家族もいるのです。私はこれまでにザトウクジラもマッコウクジラも見にいったことがありますが、実際に見られたことがありませんでした。シャチは鴨川でなら…シーワールドですけどあります。これでも高校生のときはクジラ博士と(自分だけ)思っていたくらいなので、人一倍楽しみに意気込んでいるというわけです。
でも、あれ? 様子がおかしい。宇宙服みたいなのを着せられてしまいました。同じ船に乗るのは全部で10人くらいでしょうか。待合室はスペースシャトルの乗船前みたいなことになっています。「ゾディアック」って船、聞きなれないですがクルーズ船みたいなものではないのですか?

出た! スーパーゴムボートじゃないですか!
これ、とっても速いのです。
なので防寒としてこの宇宙服が用意されていたのでした。
確かに速い、跳ねる、そして寒い。
船頭さん(若いお兄さんです)が、湾のことシャチのこと注意点などを面白く説明してくれながらだいぶ沖合までやってきました。小さなハーバーの外はきらめく大海でした。ボートは太平洋まで来たのです。
100%出遭えるとは限らないことを知っていても私はワクワクを抑えられません。
少し減速したときでした、私の見る先に黒い点が確かに2つ動いていました。私は「あそこに…」と小さな声しか出ませんでした。直後にお兄さんのアナウンスがありボートが騒がしくなります。
その黒い点はゆーっくりとゆーったりと横切っていきます。
「本当にいるんだ~!」これが私の感想。本当にいるんです、シャチ。

(photo:すずき)

そのあとも別の家族が現れたり、ブリーチング(大ジャンプ)を繰り返したり、ブロー(潮吹き、息継ぎ)後には食べた魚の匂いまで分かるほどの近距離です。一度なんてボートにジョーズみたいな背びれがグングン近づいて来たと思ったら(ホラーだよ!)、ぐるんと腹ばいになってボートの下を悠然とくぐっていったんですよ! 真っ白い畝がクッキリ見えて、私は気絶するかと思いましたから! 水中にマイクを入れると歌まで披露してくれる大サービスも! お兄さんですら大興奮です。

最初は興奮してキャアキャア言っていたボートもやがて誰も話さずにみんなが海を眺めていました。
夕暮れが迫った静まり返った海にシャチの呼吸と水に戯れる音しかしていない、こんなこと想像できますか? あまりにも自然で優しくて穏やかな風景に、そこに自分がいることすら忘れてしまいそうな時間でした。
こんな広い海で出遭えたことに心からありがとう。お兄さんも導いてくれてありがとう。そんな気持ちに自然になる、これは不思議なクジラ効果なのかもしれません。

目まぐるしく感動した一日でした。
ビクトリアの街がライトアップされるころ、ようやくホテルにチェックインして「夕食はなにが食べたいですか?」と聞かれたので、「シーフード!」即答です。
だって港町ですよ、シーフード食べないとね!

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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