Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第13回

バンクーバー島からメインランドへ~BC州滞在記 その8~

(photo:Jun Yanagisawa)

とうとうバンクーバー島を後にする日がやってきました。
1週間の滞在は充実していて、なにより楽しかった! バンクーバー島と一言で言っても広いのだなぁと改めて思いなおし、来たときのようにバスに乗り込みBCフェリーでメインランドへ渡ります。ここで一緒に歩き苦楽を共にしたBC州観光局のNさん、コーディネーターのJさん、ガイドのノロさんとお別れです。ここからはカメラマンのジュンさんがコーディネーター兼ガイドとなりアシストしてくれます。フェリーはガルフ諸島の小島を縫うようにゆったり進んでいきます。急に人数が減って何だか寂しい…そんな船旅でした。

バスはバンクーバー空港に到着。空港からはBC州内外いろんな場所へ向かう交通機関が集結しています。旅行者がどこかへ行くのなら下手にダウンタウンに出るよりも空港に来てみるのは手です。私たちが乗り込んだのは、またバス。カナダでは長距離バスもシティバスも充実しているので、レンタカーを借りない旅行者はバスがもっとも使える手段です。ただ路線が多いので目的地をしっかり伝えてチケットを購入、そして乗り場や行き先も念を押して確認しましょう。間違って乗ってしまって、気づいたらこの田舎町はどこ?…なんてことにならないように注意してくださいね。

本来ならあの空のなかに山々が見えてくる?
(photo:すずき)

私たちが向かったのは「ウィスラー」、スキーリゾートとして知られている街です。2010年の冬季オリンピックではアルペン競技などの会場ともなりました。でも実は、夏のウィスラーもハイカーには人気のある場所です。空港から2時間、「Sea to Sky Highway」文字通り「海から空まで」を繋ぐハイウェイを「空」方向に走っていきます。あいにく天気が悪く前方に見えてくるはずの山々が見えませんでしたが、それでもチラッ、チラッと覗く山肌がその大きさを期待させて胸が躍ります。目を凝らしているとだんだんと山間のログハウスが現れてカナダらしい雰囲気を盛り上げてくれます。

ウィスラーの中心「ウィスラービレッジ」はスキー場のメインゴンドラ乗り場をはじめ、飲食店、お土産物屋、ホテル、郵便局やスーパーマーケット、交番などが集まるエリアです。統一感のある街並みはリゾート地ですが、地元住民も往来していてどこか気さくな感じです。ちょうど私が訪れたときは雪のないゲレンデでマウンテンバイクの大きな大会が開催されていて、大勢のライダーや観客でビレッジは賑わっていました。北米のアウトドアスポーツカルチャーを垣間見ることができ、得した気分です。

(photo:すずき)

ウィスラービレッジのようす

さて今日からは一人暮らし、ジュンさんはウィスラー在住ですので久々に帰宅。今回私が泊まったのは「Holiday Inn Whistler」、ビレッジの端にあって静かで大変便利なホテルです。部屋はキッチン、冷蔵庫があるコンドミニアムタイプ、ウィスラーでは多くのホテルがコンドタイプなんだそう。外食には事欠かないですし、自炊して節約もできます。私は北米スタイルのボリュームのある食事が続いても数週間なら問題ありませんが、やはり体に合わない旅行者も多いと思うのです。そういったときにキッチンがあるというのは自分に合わせて加減ができるので助かりますね。

案の定買いすぎの私、残ったシリアルなどはお土産にします(photo:すずき)

私は今日から4泊するので早速グロッサリー(食料品店)でショッピングすることにしました。14年前の旅を思い出しながら、ベーグルにチェダーチーズにハム、シリアルにヨーグルトにミルク…。シリアルを朝ごはん、昼はベーグルサンドにすることにしました。サンドウィッチはハイキングにも持っていくのに最適ですし、はさむだけなので簡単! おまけに安上がりです。コーヒーやティーバッグは、ホテルのハウスキーピングが毎日補充してくれるので必要ありません。なんだかプチ海外暮らしをしているようで楽しいったらありません。ジップロックの保存袋も旅には便利なのでカゴに入れましょう…あれも、これも、ああ、買いすぎにご用心ですね。
この日は移動と準備でおしまい。カナダ取材の後半戦、ウィスラー暮らしが始まりました



ゴンドラを降りるとそこはスキー場だった…

翌日はビレッジで待ち合わせてジュンさんとカフェで朝のコーヒータイム。こんな過ごし方も日の長いカナダの夏ならでは。今日はゴンドラで楽々ハイキングの予定です。ウィスラーには麓からゴンドラが架かっているウィスラー山とブラッコム山があります。冬になればどちらもスキー場としてオープンしますが、日本のスキー場とは規模が違います。コースを滑っているというよりも山を滑っているといったほうが適切でしょう。私は過去一度だけウィスラーで滑ったことがありますが、ガイドなしでは遭難してしまいそうな広さでしたよ。ま、そんな私の未熟な滑りのことは置いておいて、現地情報によるとブラッコム山頂付近にはまだ雪がたくさん残っているとか…ジュンさんの表情も晴れません。これは何だか嫌な予感です。

まずはウィスラー山に向かいます。長い長いゴンドラでどんどん上がっていきます。雲行きがどんどん悪くなっていきます。ジュンさんはしきりに「本当ならあそこに…」「いつもはあそこが…」と言いワケのような説明をしてくれますが私には何にも見えません。
それでもゴンドラトップまで来るとウィスラー山の山肌が間近に迫ります。というか雪景色!? 7月のある日です。予想以上の雪の量です。頭上にも雲、眼下にも雲、ちょうど雲の切れ目間にウィスラー山が見えていましたが、その先は「CLOSED」の看板…「まあ、行ってみよう!」とジュンさんが自分を励ますように大きな声で言いました。

ウィスラー山頂のラウンドハウスロッジ(photo:すずき)

(photo:すずき)

今日の目的地はブラッコム山、隣の山です。どうやって行くかというと「PEAK 2 PEAK」という2つの山を繋ぐ橋のようなゴンドラ。高さは436m、長さは4.4kmあり、なんとその真ん中の約3kmは支柱がないという世界記録を持っています。高所恐怖症ではありませんが疑い深い私、こんな綱渡りみたいな乗り物大丈夫なのかいな? 口が尖ってしまいます。

私が乗り込もうとするとジュンさんが引き止めます。やっぱり危ないのか!? 怪しい笑みを浮かべてゴンドラを見送るジュンさん、そして放り込まれたのが28基中1基(2基のときもあるそう)しかないグラスボートならぬグラスゴンドラ! 底面の一部がガラスになっていて真っ逆さまな下がよく見えています。山は見えないのに底は見えているという恐ろしさ。なぜだ、なぜなんだ! 山はどこだ! ちょうど宙ぶらりんの真ん中あたりだったでしょうか、いきなり遠くに輝く山が覗きました。「あ、やっぱり大きい」カナダのメインランドの山と空で再会です。

森を真上から見る滅多にないチャンス
(photo:すずき)

グラスゴンドラはシルバー色です
(photo:すずき)

(photo:すずき)

(photo:すずき)

「PEAK 2 PEAK」で谷間を無事に渡り終え、そこからバスとリフトに乗りさらに上へ運ばれていくと、ブラッコム山はウィスラー山にも増しての銀世界。山小屋の前にはスキーやスノーボードが立てかけてあります。

「まだ滑れるの?」黙ってジュンさんが登る斜面を付いていくと尾根の裏側はまったく普通の、いや、普通以上のスキー場がドーン。「今年はまだ雪が多くて、スキーシーズンを1カ月延長したみたいよ」ガーン。にわかには理解できない本物のスキー場に唖然。「ということで、停滞です」ガーン。夏のトレイルは当然閉鎖、撮りたい写真もこの天気ではどうにもならない。つまり天気待ちをするということらしい。

これを見よ! 7月のスキー場とは思えない
雪の量!(photo:すずき)

(photo:すずき)

とりあえず寒いので山小屋に入って温かいものでも飲んでランチにすることに。山小屋といっても宿泊する場所ではなくレストハウスですが、スキー場にあるものにしては雰囲気が良く、山小屋というには洒落た感じなのです。なかはお昼時ということもありカナダの若い熱気が充満していて、いささか場違いで気恥ずかしい…。異国の人とあまり会うことのない外交性の薄い自分の日本人気質を蔑みながらも、ジュンさんの奥さんが作ってくれたおにぎりが異常に美味しい。日本人でよかった…。

結局、天気は回復せず山小屋でまったり、まったり。歩くことはできなかったけど、これはこれで…というところかな。しかし、お目当てのハイキングができないとなると今後の取材はどうなっちゃうの?
「大丈夫、ウィスラーですから!」とめずらしく自信ありげなジュンさん、20年以上も住んでいるのだから大船に乗ったつもりでお任せするとしますか! ん~~、でも残念~。心残りのブラッコム山でした。

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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