Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第18回

いよいよバンクーバー ~BC州滞在記 その13~

(photo:Jun Yanagisawa)

さあ、この旅での最後の街となるバンクーバーに向かいます。BC州といえばバンクーバーというほどの代表的な街ですが、私はカナダに降りたってからまだ空港しか利用していません。言い方は悪いかもしれませんがずっと郊外の田舎町にいたので久しぶりの大都会に行くという気がします。そしてここに行ってしまうと旅が終わってしまうという寂しさもどこかにはありました。

道路からアクセスが容易なのも人気のひとつ。車からもクライマーが見えるのだ(photo:すずき)

出発の朝、ウィスラーは山の全貌こそ見えなかったけどまずまずのいい天気。ジュンさんの車でSea to Sky Highwayを今度はSeaに向かってドライブ。途中、車で1時間ほどの街スコーミッシュにある大岩壁(スタワマス・チーフ)を、車を停めて見上げました。日本でもロッククライミイグをする人にはよく知られているこの岩壁は道路のすぐ脇にそびえ立ち、思っていたより大きく立派なものでした。
「ここもね、ガイドと登ればみきちゃんでも行けるルートもあるんだよ」…行ってみたいけど、行ってみたくないような。昨日のヴィア・フェラータの10倍はありそうな、そんな高さの壁でした。

まだまだ山で遊ぶことがたくさんあるなぁと次回に期待しつつ、走り去る車のサイドミラーに高い山々のオーラを感じながらここをあとにしました。

これを渡るとバンクーバーの街!(photo:すずき)

だんだん住宅が増えてくると、あれよあれよという間にダウンタウンのビル群が見えてきました。大きな橋のその向こうは明らかにこちらとは違う「街」。渡ったら別世界という気さえしました。にわかに今までとは違う興奮が湧いてきて、「どんなお店があるだろう?」「どんな人がいるだろう?」「なにを買おう!」なんていうことが私の頭を飛び回っています。たった1週間しか経っていないのに見るものすべてが目新しい、マクドナルドやスターバックスさえ懐かしい。天気はバンクーバーに近づくにつれて今までが嘘のような青空に! 街はキラキラ、緑も多いバンクーバー、本当に輝いています。早く太陽を浴びて体を伸ばしたい! ウズウズ、ムラムラの車中です。

私たちはさっそく車をホテルに預け、レンタルバイクをすることにします。車道には自転車専用レーンがあり、車や歩行者を気にするストレスが少なく快適に走ることができます。駐車場やビジターには分かりにくいバスの乗り換えに悩むこともないし、地図さえあれば行きたいところに行ける便利な手段です。地図も日本とは違い何丁目何番地で見るのではなく、通りのひとつひとつに名前が付いているので、座標を見るように現在地が探せるので、むしろ日本より簡単かもしれません。それに世界で住みたい街ナンバー1ともいわれる美しい街を肌で感じるのにもいいアイデアだと思います。

歩いてレンタルバイク店に行くと、すごい活気! 多くの観光者がバイクを利用しているようで、しかも子供から老人までいてびっくりです。バイクの種類も子供用からカゴ付きママチャリ風(カワイイ!)もありました。私は自転車に詳しくないのですが、東京で人気のロードバイクはバンクーバーでは少なく、ほとんどは街でもマウンテンバイクタイプでした。店員さんが私に選んでくれたのは「GIANT」のシルバーのバイク、なかなか格好いいじゃありませんか。今日はこれでバンクーバーを楽しむつもりです。

カラフルで自転車の種類もたくさん! サイズはひとりひとりスタッフがついて調整してくれた(photo:すずき)

ダウンタウンは三方向を海や入江に囲まれた半島状になっています。水辺の開放的な雰囲気と街路樹や公園などが多い緑豊かな街づくりに併せて、落ち着いたヨーロピアンな建築物や最先端をいくような高層ビルまでが違和感なく融合しています。
ちょっと公園や浜辺に目をやるとヨガマットを敷いて気持ち良さそうにアーサナ(ポーズ)をとっています。友人から聞いた話だとバンクーバーは、レッスンがとても人気があって、かなりの数のバンクーバーっ子がヨガを生活に取りいれているんですって。街を往来するみんながヘルシーに感じられ、影響されやすい私もなんだか健康的な気分になってきました。

素敵な家や庭を見物しながら住宅地を通り抜けると、シー・ウォール(自転車や歩行者、そしてローラーブレードなど専用の遊歩道)に出ました。海沿いにそれをたどると、有名な観光スポット「スタンレー・パーク」に入っていきます。

スタンレー・パークはさらに半島状に海に突き出していて、広さは日比谷公園の25倍、その外周は「シー・ウォール」が延びており、1周約9kmもあります。実は15年前、私はこのスタンレー・パークで迷子になったことがあるんです。下調べもしていなくこんなに広いとも思っていなかったので、ちょっと夕方の散歩でもと友人と歩いていたのですが、なかなか終わりが見えず日がくれてきて焦りました。いくら治安のいいカナダでもこれは危なかったなと反省した思い出があります。そのときは夕方で人も少なくあわてていたので景色もあまり見られなかったのですが、今回はまだお昼前です。時間はたっぷりあります。はじめはハーバーを気持ちよくサイクリング。イメージ通りのバンクーバーらしい海と都会の景色! 道は片側一方通行になっているので景色を見ながらでも安心して自転車を漕ぐことができます。ときおり道幅が狭まり渋滞になるような箇所も出てきましたが、長くは続かないのでゆったりとやり過ごしましょう。ひときわ混雑している場所はなにか観光スポットです。私たちもバイクを降りて寄り道するとします。

なんて大きな作品なんだー!(photo:すずき)

賑わっていたのは「トーテムポール・パーク」、BC州に住む先住民たちが作ったトーテムポールが何本も集まっています。カナダは建国してからまだ145年目という若い国ですが、そのずっと前、ヨーロッパ人が、北米に渡るまえから人は暮していました。先住民といわれる人たちです。以前ですとインディアンと呼ばれることが多かったのですが、インド人と混同することや差別用語にも聞こえるということで最近では「ファースト・ネーションズ」「ネイティブ・カナディアン」と呼ばれています。

15年前に旅した時、私は彼らの暮らしや教え、装飾品にいたるまで興味津々で、先住民ゆかりの地や資料館などいくつも巡りました。辛い過去の歴史や現代の新たな問題を知ることも多く、落ち込むこともありましたが、彼らの神秘的な文化、物事を大きくとらえる価値観などを体感できたのは今でも大きな財産です。困ったとき、一見怖そうな顔をした先住民に助けてもらったこともあって「インディアン、嘘つかない」は本当だった! と嬉しかった思い出があります。

カナダには今もたくさんの先住民の部族が暮らしていますが、住んでいる環境によって暮らし方も風習も特徴があります。例えば先住民と聞いてすぐにイメージできる羽根のたくさんついた頭飾りは、大きな鳥が飛んでいる内陸の平原に暮らす部族のものです。バンクーバー周辺など太平洋沿岸に暮らす部族にはああいった頭飾りはありません。装飾品や美術品でだいたいどのような場所で暮らしをしていた部族か知ることができるのです。

トーテムポールも、太平洋沿岸部で生活してきた先住民の特徴的な文化のひとつです。1本の木の幹に様々な動物を彫り込んだもので、1本で家系(クマやワシ、カラスなどのシンボルがあるのです)や一人ひとりの出自などの物語を現していると言われます。日本でいうと家紋に似ているでしょうか。

このスタンレー・パークのトーテムポール・パークではそれぞれに違う部族、違うアーティストの彫ったトーテムポールを見ることができます。普通なら並ぶことのない違う部族の作品を見比べられるチャンス。色使いやモチーフの表現がこんなに違うなんて並べてみないと分からなかったことかもしれません。「ああ、この人は熊系かしら」「この人は魚捕りの名人かも」などと想像してみるのは面白いです。実は15年前もこれが見たくて公園に来たのですが、あわてていたため見られずじまい。今回、またひとつリベンジできた気がしました。

バンクーバーはアジアからの移民が多い都市で中国系、インド系、フィリピン系…と様々な人がいます。ここでは日本でいう「外国人」は誰なのかなんて分かりません。多くの移民を受け入れ調和を目指しているこの街では、熊系、ワシ系、カラス系も自然に馴染んでいるのかな。どんなに都会になっても神話の世界が調和した土地なんて素敵じゃないですか!
私はトーテムポールにテンションが上がり、この旅で初めてジュンさんに「トーテムポールと一緒に写真を…」とカメラを渡してお願いしたのでありました。
サイクリングは続く…。

ハイ、2ショット! やった~!!

whistler style

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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