Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第20回

グラウス・マウンテンのトレイルで大汗!~BC州滞在記 その15~

(photo:Jun Yanagisawa)

バンクーバー2日目はグラウス・マウンテンへ。スタンレー・パークのサイクリングで見たライオンズ・ゲート・ブリッジを越えて、ノースバンクーバーへと向かいます。私はジュンさんの車での移動でしたが、ダウンタウンから市バスでも行くことができます。
グラウス・マウンテンにはゴンドラが架かっていて、山頂駅からはバンクーバーが一望できるとあり、観光客に人気のスポットです。日本からの観光ツアーにもだいたい組み込まれているのではないかな? 私が15年前にバンクーバーに来たときも訪れました。そのときは数日の滞在でしたので下調べもなくガイドブック通りにゴンドラに乗り山頂へ行きました。あいにくのお天気で展望のないまま、残雪の短いトレイルを歩いた記憶があります。
それが今回は歩いて下から山頂まで行くといいます! 前日は海に翻弄されたので(前回のエッセイ「グランビル・アイランドで初挑戦」へ)、山に行けるのが楽しみでした。バンクーバーきっての人気の山とはいえ、ゴンドラがあるのに下から登っている人なんているのでしょうか?


大きな駐車場に着くと、だいたいの人はゴンドラ駅のほうへ歩き出します。リュックを背負って トレッキングブーツを履いているのは私たちくらいでしょうか。それでもチラホラとマイカーでやってきた 人がトレランシューズに履き替えている姿が見えました。きっと同じトレイルを行くのかな? 持ち物を見るとそういう勘が働きます。


駐車場の外れに登山口がありました。「グラウス・グラインド」とあります。これがこのトレイルの名前のようです。金網のゲートがなんとなく物々しい雰囲気、どうやら時間制限があって夜はゲートが閉まるようです。そしてなにやらスポーティな人たちが吸い込まれていきます。んん?なにか様子が今までと違う?

こんな感じで「ピッ」とするようです。私はカメラで格好だけ参加

ホットパンツにタンクトップといういでたちに、片手にはスポーツドリンクのボトル、足元はトレランもしくはジョギングシューズ、そして首からIDカードのようなものをぶら下げています。どうみても山登りという感じではありません。長袖に長ズボンの私のほうが完全に場違いです。

呆然と眺めているとみんなIDカードを入口の機械に駅の自動改札のように「ピッ」と認識させてスタートしているようです。最初はなにかチケットが必要なのかな、と思いましたがそんなはずはない…どうやらあの機械はタイマーで、IDカードをかざすと自分の出発時間が記録されるもよう。はは~! よくできている! 私はワークアウト好きなカナディアンの気持ちをそそる、とてもいいアイディアだなぁと思いました。私も一応時計を確認して出発です!

樹林帯のなか、木漏れ日のさす広いトレイルから始まって気持ちがいい~なんて思っていたのはほんの数分。すぐにグラウス・グラインド・トレイルの正体が明らかになりました。
「ザ・階段」!! 急斜面を延々と階段が整備されています。こ、こんなはずでは!? ここは市民に愛されるタイムトライアル・トレイルだったのです。もちろん歩いてゆっくり登ったって構わないのですが、のんびり歩いているのははっきりいって私だけ(苦笑)、次々とハイカーならぬランナーがすごい勢いで登ってきます。なかには70代と思しき姿も! それにつられて私もどんどん速くなっていきます。
急に人種的な体力の差を感じます。この人たち強すぎ! 私だって山登りは定期的にしていますし、体力だって娘っ子のころよりもあるつもりでしたが、走らないギリギリの速さで必死で登っていても、どうみても年上の先輩方に抜かれる、抜かれる…。道幅が狭いところでは私が渋滞を作ってしまったり…もう心肺機能の差は歴然! こんなときは発想を転換させて開き直るしかない。「いや~走ったら勿体ないじゃない? 日本から来たし」。諦めてゆっくり歩き出す私でした。

(photo:すずき)

それにしても健康志向なカナディアン、日本の山でこんなにみんなに走られている山があるでしょうか。イメージするなら皇居です。日常にスポーツを取り入れたライフスタイルは皇居ランナーと似ているかもしれません。ウィスラーやストラスコナでも健康志向は変わりませんが、そこで行うアクティビティはもっとワイルドでゆとりがあったような気がします。東京もそうですがバンクーバーも都会、時間的に忙しい人が多いから合理的に体が動かせるアクティビティに人気があるのかもしれません。「走る」というのは、靴さえあればどこでもいつでもできるわけですからピッタリなのですね。

だがしかし、山を登る一方通行で走っている人がこんなにいるなんて、ちょっとびっくり。それと彼らの羨ましいことのひとつに「遠慮せず苦しそう」にトライしていることがあります。私だけではないと思うのですが、例えば山登りですごい苦しく喘いでいても、人がいると遠慮なのか恥じらいなのか荒い呼吸を無理に抑えてしまいます。それがこちらでは荒い息どころか何か叫んでいるかのような息づかい。顔をグチャグチャにして走り方もグチャグチャにして私を追い越していくのです。

女性も多かったのですが、露出度が高いわりにヘルシーでさまになっているのはさすが! どうやら「ルルレモン」(バンクーバー発信のヨガウエア)の黒のレーサーバックのタンクトップが定番のよう。私は歩いている分際だけど、そのウエアが欲しくなってしまいました。周りの人には気を使いつつ遠慮なしに観察しながら歩いていくと、ようやくゴールが見えてきました。

ゴール付近には清々しい顔をした人が何人もスポーツドリンクを美味しそうに飲み干したりしていて、まさにマラソンレースのゴール現場! さらにそこを駆け抜けていくのは例のIDカードをぶら下げている人、ゴール奥にあるタイマーを目がけて最後の力を振り絞ります。「ピッ」改めてゴールです! おめでとうございます! 山登りに来て「おめでとう!」も変ですが、ゴールは本当にそんな空気が漂っていました。

息も絶え絶えゴール! 黄色い看板には「下山禁止」の文字、このコースは登り一方通行なんですよ。下りる時はゴンドラで

そして、吹き出る汗を拭いながらゴンドラ山頂駅のある建物に入っていきます。ここは駅のほかにレストランやお土産屋が入るビジターセンターのようなところ。観光客に混じってランナーが熱い視線を送っている画面がありました。

写真でもわかるとおり、画面には個人の名前とタイムが表示されます。横にある山の名前は、段位のようなものだと推測されます。これはやる気が生まれますね! あのIDカードにはこんな仕掛けがあったのです。その日の上位ランキングを見て仰天! ええー!!? 20分で登ってしまうの?! 私のタイムは1時間30分くらいでしたので信じられませんね。いやはや本当に都会と自然が混在するバンクーバーならではの斬新なワークアウトでした。
トレランに心得のある方、自分の体力を試したい方はバンクーバーを訪れたら自分でタイムを計ってエベレストクラスにチャレンジしてみてはいかがでしょう?

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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私の場合は、山でした!女一匹フリーター、じたばた成長物語

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