Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第32回

ロッキーの裏銀座へ

(photo:Shinichi Yajima)

カナディアン・ロッキーを貫くルートはレイク・ルイーズから北西へ、アイスフィールド・パークウェイでジャスパーに続く道です。一般的なパッケージツアーで訪れるのはたいていこちらなのですが、私たちはレイク・ルイーズから南側の1号線へ。今回の取材では、ちょっと通な、BC州側のカナディアン・ロッキー、「大人ロッキー」(大人ポッキーみたいですね)をテーマにご紹介していきます。

カナディアン・ロッキーには4つの国立公園があるのは前回お話したばかりですが、まず私たちが向かったのはヨーホー国立公園。バンフ国立公園やジャスパー国立公園に比べると半分にも満たないサイズですが、より荒削りなカナダらしい自然を静かに満喫できるため、コアなファンが多いエリアです。

性格的にあえて流行っているものを避け、人気の場所に行かない傾向にある私。たとえば北アルプスには「表銀座」と呼ばれる槍ヶ岳を目指す人気の縦走路がありますが、私が強く惹かれるのはあまり人のいない「裏銀座」という縦走路。ヨーホーもまさにそんな場所、今回の取材行程が決まったとき、ここは私にぴったりだなあと思ったものです。

エメラルドと化石

1号線沿いの小さな町、フィールドから北へ側道を入っていきます。道幅は今までがとても広かっただけに狭く感じ、樹林帯のなかなので暗くも感じます。しばらく走ると携帯電話の電波もなくなりました。最初は焦ったのですが、慌てても仕方がないことに気づくと逆に落ち着いてきました。本来はこうして自分の内側だけに向き合って自然を楽しむべきなのかもしれません。

バンが到着したのはエメラルド・レイク・ロッジの送迎バス発着所、小さな待合所の電話でガイドのNさんが迎えを頼みます。今夜から2泊するのはエメラルド・レイク・ロッジ。エメラルド湖畔に建つ、高級グレードのキャビンタイプ・ホテルです。実は16年前、なかばヒッチハイクのような手段でたどり着いたのがこのエメラルド・レイクでした。滞在時間はわずかに30分程度…名前の通りの美しい湖だけしか記憶になかったので今回宿泊できるなんて夢のよう!

迎えのバンに乗るとすぐに視界が開け、湖が見えました。エメラルド氷河から流れ出す水で満たされた湖は「これこそカナダ」と言わんばかりのグレイシャーブルー、いやグレイシャーグリーン、いや、エメラルド! 天気も良く、その色は宝石のように周辺から一段と際立って見えました。

湖ではカヌーなども楽しめます!

エメラルド・レイクの美しさもさることながら、周りにそびえたつ岩山が鏡のような湖面に映る様子はため息もの…。この山のひとつ、バージェス山はカナディアン・ロッキーが世界遺産登録される4年前の1984年に単独で世界遺産となった場所です。

なにが大切な自然遺産かというと…「古生物の化石」。そう聞いてピンとくる人はそう多くはないと思いますが、バージェス山で恐竜よりもっと前、魚より前、約5億年以上前(カンブリア紀)の海に住んでいた動物の化石がたくさん発見されたのです。いちばんの有名人(?)はアノマロカリスですが、興味のない方たちには三葉虫のようなものがイメージしやすいでしょうか。それまで発見されていた節足動物と違うものであったことや細かいところまで鮮明な保存状態だったことなどから、古生物学的に大変重要視され、世界遺産になったのですが、カナディアン・ロッキー一帯が登録されたことで一緒にされてしまったようですよ。ちょっと惜しい。

現在はレンジャーと一緒ではないと採石場まで登れないそうですが、夏には定期的にレンジャーツアーがあるようなので一度行ってみたいなぁ。それにしても5億年前に海の底だったのが、標高約2500mにまで押し上げられる地球の動きというのはやはり想像を絶していて凄いですね。この驚きをロッキーで目の当たりにして若き日の私は山に魅了されてしまったわけなのです。

エメラルド・レイク・ロッジ

エメラルド・レイク・ロッジは、フロントデスクとレストランがある母屋と24棟のキャビンがそれぞれ湖畔にゆったりと建ち、プライベート感満点の宿。周りにそのほかの人工物はなにも見当たらないので、日帰りの観光者がいなくなってしまうと宿泊者だけの贅沢な時間を過ごすことができます。

キャビンの裏に鹿が!(photo:すずき)

私が泊まったキャビンは1棟に4部屋、2階だったので窓からは湖が見えました。そして、部屋には暖炉があり、すぐに点けられるように炊きつけと薪がきれいにセットされていました。日本にこんなホテルあるのでしょうか? 火の扱いができるかできないか分からない宿泊者に暖炉を任せてしまうなんて! 私はそんなところにとても感動しつつ、もちろん着火しました。暖炉の扱いは初めて、ちょっと緊張しましたがスタッフの方のセッティングも良かったのでしょう、なんなくいい炎が上がりパチパチといい音を聞きながら移動日の疲れを癒しました。

(photo:すずき)

さて、夕食をいただいたレストランもとても素敵でお料理も洗練されていて本当に感心したのでちょっとご紹介。お値段もそれなりですが、見た目も美しく素材も地元のものだけを使っていて食べる価値ありのお料理でした。味付けもごく薄味でハーブやスパイスの香りや風味を生かしていたのも私好み! 途中でメインシェフの女性が席を訪れてくださったのですが、その方が痩せていないというのも私好みのポイントです。美味しいお料理を作る人が痩せていられるはずはないと信じているんです! レストランのレシピ本も出ていて、私、重いのに持って帰ってきたほど気に入りました。おいしかった!

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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