Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第35回

タカカウ・フォールズへ

(photo:Shinichi Yajima)

エメラルド・レイクに並ぶヨーホー国立公園の見どころであるタカカウ・フォールズに行ってみることになりました。正直「うーん、滝?」という感じ。観光地というイメージが先行してさほど期待もなくバンに乗り込みました。
見通しのいい広い1号線からヨーホー・バレー・ロードに入ると景色は一変、ヨーホー川に沿って渓谷のなかを走っていきます。さらに道は狭くなり今度は山肌に貼り付けたような、つづら折れの急坂を登っていきます。
箱根や日光でも山を登っていく急な坂がたくさんありますが、ここはもはや崖です。高所恐怖症の人は下を見てはいけません。カーブはヘアピンを通り越しV字カーブ、大きなバンやキャンピングカーは切り返しが必要になるかならないかというくらいです。大型のバスは登山電車がするようにスイッチバック(前進でカーブに入り、バックで次のカーブまで登る…と繰り返す)するんだそうです。こんな経験は初めて!
後ろに下がっちゃうんじゃないかと少々怖かったですが、私は高い場所が好きなので車窓に釘付けでした。

(photo:すずき)

このヨーホー・バレー・ロードの終点がタカカウ・フォールズです。そんな道路ですから、雪の降る時期は閉鎖になってしまいます。ということは1年の半分くらいしか見にいくことができない滝です。駐車場に着くと早速、山の岩肌に滝の上部を見ることができました。「ほう、あれか…」最初の印象はそんな感じでした。
駐車場の周りは誰でも歩けるように道が整備されていて、トイレやキャンプサイト、ユースホステルがあります。朝早いにも関わらず続々と車が到着します。ここを起点にハイキングに出かける人も多いようでした。

と、ここでカナダのキャンプ場について少し紹介しましょう。
カナダのキャンプサイトはよく整備されている印象がありますが、ここタカカウのキャンプサイトもとてもきれいでした。BC州には、公営、民間を含め様々なキャンプ場があります。ロッキーなどの国立公園内にもパークス・カナダ(カナダ国立公園管理局)が管理する施設がたくさん点在しており、その規模も設備もさまざま。小さくて人気のあるサイトは事前に予約が必要な場合がありますが、通常は予約なしでも空いていれば泊まることができます。ほとんどが有料で、利用方法などはビジターセンターや管理人に声をかければ説明してくれます。タカカウのサイトは駐車場からも近く便利そう。1区画それぞれが余裕のあるサイズで、隣も気にならずいいなぁと思いました。ストーブのある炊飯棟もありましたよ。

調理はテント場から離れたところで(photo:すずき)

カナダでテント泊の旅も憧れます

独特なのは、やっぱり熊など野生動物を近づけないための対策です。このように整ったサイトでは必ず「フードキャッシュ」という食料庫があります。食べ物や調理器具はテントの中には置かずにこのフードキャッシュに入れ、調理もテントから離れた場所でするのがベターとされています。このあたりが日本の常識と違うところですが、そのほかのマナーや使い方は同じようです。私もいつかチャレンジしてみたいな!
サイトの周りのトレイルの状況や天気などは、パークス・カナダのスタッフが毎日アップデートして貼り出してくれます。英語とフランス語の両方で張り出されるのがいかにもカナダ! ですね。

掲示版にはいろいろな情報が

こちらがフードキッシュ。取っ手部分に手を入れ込んで扉を持ち上げる仕組み

「素晴らしい」滝

さて、歩きやすい平らな道を滝に向かって歩き出します。近づくにつれ滝の姿は見えなくなりますが、その代わりに音が…音の轟きを強く感じてきます。「えー、どういうこと?」と徐々に期待が膨らみます。小さな橋を渡り視界が開けると、期待以上の絶景が目の前に!「す、すごい」。

水しぶきがキラキラと(photo:すずき)

タカカウ・フォールズの落差は約400m、幅は30mほど、ものすごい水量が空から落ちてきています。その流れはスローモーションで見える気がするほどの重い水の塊で圧巻です。滝の途中に段差があり、そこにぶち当たった水が跳ね返る様がまた凄まじい。辺り一帯はその飛散した粉末状の水で常に霧雨が降っているようです。光が差すといろんなところに虹色が現れます。駐車場から見えたのは、本当に上部だけだったのです。さらに滝に近づけるようになっていますが、音や水しぶきもさることながら風がすごい。水の勢いが起こす風がグングンと巻いています。「タカカウ」とは先住民クリー族の言葉で「素晴らしい」という意味、まさにこれは素晴らしい! しかし私が名づけるなら「恐れ入った!」というところでしょうか。

あまり期待していなかった分、驚きは倍増でした。実はこの落差約400mというのはロッキーでは最大ということなので、驚くのも無理はありません。ちなみに日本で最大落差を誇るのは富山県立山の称名滝で約350m、有名な華厳の滝で約100mですから、その高さは想像を超えるものです。
仰け反って見上げるほどのタカカウ・フォールズですが、その水源は滝の上に広がるワプティック・アイスフィールド、つまり氷原です。氷原の上部にはデイリー氷河もあります。その氷の融け水が集まり滝となって流れ落ち、ヨーホー川に注いでいるのです。毎秒こんな水量が融けていると思うと、その上部の氷原はどれほどの大きさなのでしょう。下からは見えないだけに、想像もできません。しかし私たちはその後、ハイキングで実際にワプティック氷原を見ることになります。そのお話はまた今度。

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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