Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第39回

アイスライン・トレイル(3)

(photo:Shinichi Yajima)

昼食を食べ終わり再び出発です。息が上がるような道ではないものの、モレーンの大きくゆったりした起伏がじわじわと足にこたえてきます。お弁当分はザックが軽くなったのに背負いなおすと重く感じるようでした。トレイルは最高点を越えたので、アップダウンを繰り返しながらも標高が下がってきたようです。お花にもまた出会えるようになり、眼下にあった緑の森も歩く視界に入ってくるようになりました。

(photo:すずき)

(photo:すずき)

次の休憩場所に着くと気になる場所を発見。モレーンのとんがり山です。その頂に何故か男性陣のテンションが上がりました。諸外国の男性たちがどうだかは分かりませんが、とんがっていると行きたくなるのかな? 男性陣…と書きましたが実は私もテンションが上がったうちのひとり…。ひとりひとり恐る恐るそのとんがり山に登ってみました。周りから取り残されたような山頂は360°の大展望、アイスライン・トレイルを見晴らすテラス席のようでした。
普段から「登頂にはこだわらない」と明言している私ですが、とくに山頂らしい山頂もないトレイルにあって、この頂に立ったことでちょっとした達成感を味わったような気がします。それは「このトレイルを歩いてきた」という満足感が湧いた瞬間でした。山頂は自分たちが歩いてきた道、景色を俯瞰して客観的になれる場所なのかもしれません。

今回の取材は私たちを合わせて3つの取材チームが参加していました。各々、次から次へ現れる絶景に撮影をして、ガイドさんにインタビューをしていたのでコースタイムはオーバーしていました。夏の陽が長いカナダでも太陽が傾いて肌寒くなるのが分かるようになってきました。ガイドさんのほうから「そろそろ急ぎましょう」と言われ、私たちは少し焦りを感じたのか誰からとでもなく早足になりました。少しずつ少しずつ標高を下げて森の入口まで下りてくると、木々に風が遮られ暖かく、それだけでホッとしました。「暗くなってきた」「寒くなってきた」。山ではそんなことだけで知らず知らず不安になるものなのですね。

(photo:すずき)

森に入るといつも冷静沈着なガイドのNさんが「うおおおおおおおおーーーーー!!」と私たちの心臓が止まるくらいの大きな声で叫びました。な、な、な、なにがあったのかと恐れをなしていると、熊対策なんだそうです。「自分たちがいますよ、これから行きますよ」というアピールを熊にするのです。ホイッスルなどでもいいそうですが、人の大声のほうが有効だとNさんはおっしゃっていました。以前のエッセイでも書きましたが、熊が行動する時間に、熊がいるポイントで、対処するというやり方がさすがベアカントリー、カナダだなと思います。それにしても大きな声でした…。

(photo:すずき)

森をどんどん下っていきます。目指す山小屋はこの森の下にあるようです。「もうすぐ」と思うと遠く思えるのは何故なんでしょう。まだ着かないなぁ、まだか、まだかと時計を見ても10分も経っていない、そんななか木立の間から建物が見えました。みんなの口から安堵の声がもれました。疲れてきていたのは私だけじゃなかったのです。しかし、「見えてから」がまた長く感じるんですよね!

スタンレーミッチェル小屋は「カナダ山岳会」の所有する小屋です。ガイドのNさんがカナダ山岳会に所属しているため、優先的に泊まることができました。貴重な体験をさせてもらえて、Nさんに感謝です。山小屋には薪ストーブがあってウッドチェアーがある、思い描いてたようなログハウス。今度は女性陣のテンションが上がります。「素敵!」「かわいい!」を連呼してジロジロとチェックしていました。
営業小屋には小屋番がいるのが当たり前ですが、スタンレーミッチェル小屋には決まった小屋番がいません。そのかわりに有志の管理人がいます。管理人は小屋の掃除をしたり、宿泊者に小屋の使い方を教えたりします。管理人は会のメンバーの希望者が1週間や月単位で交代で務めているそうです。これも希望者が多く競争率が高いんだとか! 確かにここに住んでみたい…私も管理人希望です。

つづく

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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私の場合は、山でした!女一匹フリーター、じたばた成長物語

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