Miki’s Essay 鈴木みきのカナダのお山へGO! 第44回

グレーシャー国立公園

(photo:Shinichi Yajima)

(photo:すずき)

たくさんの思い出を残してロッキーを離れるときがやってきました。国道1号線を西に車は走り出しました。ロッキー山脈がバックミラーに遠くなっていきます。車窓の山々が柔らかに見えます。私たちが走っているのはトランスカナダハイウェイの一部、カナダを太平洋から大西洋まで横断する道路で、なんと全長は約8,000キロにも及びます。その長大なトランスカナダハイウェイの西と東とが最後につながった歴史的な場所(1962年に開通!)が、これから向かうグレーシャー国立公園内にある峠、ロジャース・パスです。

ヨーホー国立公園を出た私たちは、最初の町ゴールデンを通り過ぎ快調にドライブをしていました。それまでは穏やかな山と谷を眺めていたのですが、再び急峻な山間を道路が走るようになります。グレーシャー国立公園のなかに入ったようです。そのうちに道路は崖のような山肌をコの字にくり抜いたようになり、片側は底が見えないくらいの深い谷になっています。Nさんに聞くと、このあたりはロッキー山脈でも有数の豪雪地帯で、冬は雪崩の巣になるのだといいます。降雪のため道路が通行止めになることも度々あるとか。約130年前の大陸横断鉄道建設時には、雪崩も頻発して多くの労働者が犠牲になったそうです。
しかし、それをキッカケにカナダでは雪崩の研究が本格的に始まりました。たとえば被害を避けるため事前に人為的に雪崩を起こすアバランチ・コントロールなどもそのひとつ。ロジャース・パスには、かつてこのアバランチ・コントロールに使われていた大砲のモニュメントが飾られていました。

カナダの屋根、ロッキー山脈内を別格として除くと、このロジャース・パスがトランスカナダハイウェイの最高地点になります(ちなみに真の最高地点はヨーホー国立公園内、キッキングホース・パス)。車を降りてみるとヒンヤリと寒いほどでした。前方には氷河がへばりついた高い山々も見えますが、立っている場所は両側を急斜面に挟まれていて、雪崩事故の話を聞いていただけに冬を想像すると背筋もヒンヤリします。

ロジャース・パスにはグレーシャー国立公園のビジターセンターもあるので寄ってみることにします。観光・ハイキング情報だけでなく、かつてこの難所を克服した鉄道建設の歴史なども展示されています。当時使用していた道具や衣服、古い映像などもあり見ごたえ十分です。

(photo:すずき)

開拓時代の写真も多く飾られていましたが、なかでも目を引いたのは当時のハイキング風景の写真です。男性はニッカポッカにハンチングで英国紳士風にキメていて、女性はなんとドレスのようなロングスカートで微笑んでいます。飾りのついた帽子もちょこんとかぶりステッキを持ち、氷河の上を歩いていました。足元が見えなくて怖そう…。パンツを履かなかった当時の女性が、現代には山登りにも快適なスカートが作られたと知ったら羨ましがるでしょうね。

奥には公園内に生息する動物たちの剥製がありました。幸か不幸かリスくらいにしか会わなかったので、ここで動物ウォッチングをすることにします。
グリズリーベアはまだ若いのか、ちょっと小さいように思いました。とはいえ、山で会わなくてよかったです。私がもっとも恐ろしいと思ったのは、クーガー(マウンテンライオン)です。ライオンのメスほどに大きくて、足もガッチリしていて見るからに気が強そうです。音もなく木の上に潜んでいて、万が一狙われたらと思うとゾッとします。ネコ科だけに機嫌が悪いだけで襲ってきそう…私は剥製の前で唸ってしまいました。

グレーシャー国立公園はロッキーのなかにある公園に比べたら、格段に観光客が少ないエリアです。その分、こうした野生動物たちに目の前で出会うことだって不思議ではない場所です。自然の中に入るときはいつも、動物が生きるエリアに私たち人間がちょっとお邪魔させてもらうのだと意識しようとしてきましたが、ここではそれがすんなりと腑に落ちる気がしました。

鈴木みきプロフィール

鈴木みき
1972年東京生まれ。
山梨県・八ヶ岳南麓在住。
イラストレーター
24歳の時のカナダ旅行をきっかけに山にハマり、登山雑誌の読者モデルや山小屋アルバイトを経て、登山系イラストレーターとなる。

著書

「悩んだ時は山に行け!」
(平凡社)

「あした、山へ行こう!」
(講談社)

「ひとり登山へ、ようこそ!」
(平凡社)

「山小屋で会いましょう!」
(講談社)

「山テントでわっしょい!極める「山女子」のヨロコビ」
(講談社)

「私の場合は、山でした!
女一匹フリーター、じたばた成長物語」
(平凡社)

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